クナッパーツブッシュ指揮 ウィーンフィルハーモニー
[ロンドン CDの番号は不明(僕のは古いLPです)]

 悪名高き「シャルク改訂(超改悪)版」による演奏です。
 ブルックナーはなかなか自分の書いた通りの楽譜で演奏してもらえなかった可哀想な作曲家で、弟子たちが当時の流行に沿って楽譜をメチャクチャに書き換えて演奏し、しかもそれが出版されてしまったという事情があります。これがいわゆる改訂版です。
 5番ではこの改訂の被害が特に大きい。演奏時間が短いのは決して演奏が速いせいではありません。テンポ設定が書き換えられていたり、大幅に削除されていたり、が原因です。特に4楽章の削除はひどいもんです。また、オーケストレーションも見る影がないくらい書き換えられています(ワーグナー風に、ということですが??)。初演はこの改悪版によってフランツ シャルクの指揮によって行われ大成功を収めたそうです。しかしブルックナーは体調が悪かったため初演は聴きにいけなかったということになっています(結局、生前1回も聴いていない)。しかし、この改訂に同意できず、不満であったためあえて聴きにいかなかたという説もあり、僕はこちらを信じたい(というくらいひどい書き換えがされています)。 クナッパーツブッシュはワーグナーとブルックナーの演奏では定評があったドイツの大指揮者です。しかしブルックナーは改訂版を使うのをモットーにしていたそうで、5番に限らず残っている演奏は全て改訂版によっているようです。クナなりに考えはあったのでしょうが、改訂版を好んだという一点において、それがどんな名演であっても、ブルックナー指揮者として失格と言いたい。昔はこんなひどい版を使っていたんだ、という歴史をとどめる一品という意味で★半分(☆)だけつけました。
 実は僕が高校生の時に初めて5番を聴いたのがこの演奏なんですよね。実に名演だったためこの演奏が耳に残ってしまい、その後原典版の演奏になじむまでかなり時間がかかってしまいました。ということで、初めて5番を聴く方は、「決して」この演奏を選ばないで下さい。
 ちなみにCDは少なくとも2種類でています。値段は同じくらいだったと思いますが、片方にはワーグナーの神々の黄昏の抜粋(だったと思います)が収録されていますので、どうせ買うならそっちでしょう。