セルジュ チェリビダッケ指揮 ミュンヘンフィルハーモニー
[AUDIOR (MADE IN USA) AUDSE-523/4]

 チェリビダッケは何となく変な演奏が多い印象だったので、今まで敬遠していました。しかし石丸電気に行ったら他にあまりパットしたCDが無かったのであまり期待せずに買ってきました。シュテュットガルト放響のもあったのですが、手兵のミュンヘンの方を選んできました。
 聴いてみてびっくり、予想を裏切るすばらしい演奏でした。
 テンポはゆっくり。特に2楽章はいままで聴いたことのある演奏のなかで最遅速。インバルの2楽章が「ちょーとっきゅーー」だとすれば、こちらは力強い「SL−D51(デゴイチ)」というところでしょう。山岡先生のテンポにショックを受けないようにあらかじめこれを聴いてなれておくというのもよいかもしれません。
 バランスは全体的に弦を重視して演奏・録音されています。この弦の厚みとダイナミックスが圧巻です。金管のバランスもよく、どこかのパートがでしゃばるということがなくて、ハーモニーが固まりになっておしよせてくるという感じです。当然、木管もはっきりしっかり歌っていて、弦・金管に負けていません。
 縦型のアクセントが妙になめらかでテヌートしているような感じ(特に1楽章出だしのトランペットや、4楽章練習番号Iから始まるフーガでテーマが次々にでてくるところなど)や、同じような音型を繰り返しているところで後半が妙に小さくされているところ(1楽章練習番号Hなど、ここはSempre ffなのにな〜)など、僕の趣味に合わないところもあります。これは好みの問題でしょう。全体的な印象を料理にたとえるとアバドは色彩たっぷりで変化に富んだフルコース、チェリビダッケは塩胡椒味の分厚いステーキにジャガイモと酢漬けキャベツの付け合わせ、といった感じです。
 ★は最初聴いたときのあまりの感動に★★★★☆つけてみたのですが、2楽章がとっても遅いというのも(僕は好きですが)万人向けではないし、やっぱりちょっと毛色の変わった演奏ではある、ということと録音がちょっと良くない(悪いまではいきません)、ということで少なくとも初めて聴くCDには適さないかな、と考え直して★★★★につけなおしました。一枚目にアバドやシャイーを買ったあとの2枚目以降にお勧めです。
 なお、同じ顔ぶれでEMIから国内版が出ていますが、違う演奏のようです。EMIのは曲の前後に拍手が入っているというのと、演奏時間が違うようです(なんと2楽章はこれよりさらに遅い24分台でした)。これもこんど聴いてみたいと思っています。